2024/12/10
令和6年分の年末調整においては定額減税実施による年調減税が発生します。今回はその年調減税についてお話しします。
1.定額減税
定額減税は納税者、同一生計配偶者および扶養親族1名につき、それぞれ所得税3万円と住民税1万円の計4万円が控除される仕組みです。定額減税には月次減税と年調減税があります。月次減税については今年6月時点の状況に基づいていったん減税額を定め、所得税の減税を行うというもので、すでにみなさまも減税されているのではと思います。
2.年調減税
年末調整の際に、年末調整時点の本来の所得税に対する定額減税額を定め必要に応じて精算を行います。
3.年調減税の対象者
年調減税の対象者は、基本的に年末調整の対象者です。令和6年12月31日時点で国内に居住中、かつ扶養控除等申告書を提出している人(甲欄適用者)となります。
これにより、6月2日以降に入社した人で甲欄の人は月次減税の対象にはなっていませんでしたが、年調減税の対象になります。
対象とならないのは、合計所得金額が1,805万円を超える人や、扶養控除等申告書を提出していない人(乙欄・丙欄適用者)、年間所得金額が48万円以下のため算出所得税額が0円となる人です。
4.年調減税の計算
対象者ごとの年調減税額の計算は、「扶養控除等申告書」や「配偶者控除等申告書」などを用いて年末調整の時点の同一生計配偶者の有無及び扶養親族(いずれも居住者に限ります)の人数を確認し、「本人3万円」と「同一生計配偶者と扶養親族1人につき3万円」との合計額を求めます。
5.年調減税の控除
対象者ごとの年末調整における年調減税額の控除は、従来通りに年末調整の計算を行い、住宅借入金等特別控除後の所得税額(年調所得税額)から、その住宅借入金等特別控除後の所得税額を限度に行います。その後、復興特別所得税を含めた年調年税額を計算します。具体的には下記の算式となります。
(合計所得税額-年調減税額)×102.1%=所得税額(復興所得税額含む)
結果として以下の現象が発生しやすくなります。
①6月以降に扶養家族の増加があった人は年調減税額が月次減税額と比べて1人あたり3万円増加することから還付が発生する可能性が高くなります。
②6月以降に扶養親族の減少があった人は年調減税額が月次減税額と比べて1人あたり3万円減少することから徴収が発生する可能性が高くなります。
③6月2日以降に入社した甲欄適用の従業員は月次減税の対象ではないため、これまで月次減税が行われておらず年調減税のみで減税されるために還付が発生する可能性が高くなります。
6.源泉徴収票の表示
年末調整終了後の給与所得の源泉徴収票には、その摘要欄に実際に控除した年調減税額を「源泉徴収時所得税減税控除済額●●●円」と記載し、年調減税額のうち年調所得金額から控除しきれなかった金額を「控除外額●●●円」(控除しきれなかった金額がない場合は「控除外額0円」)と記載します。
さらに、合計所得金額が1,000万円超である居住者の同一生計配偶者(以下「非控除対象配偶者」といいます)分を年調減税額の計算に含めた場合には、上記に加えて「非控除対象配偶者減税有」と記載します。
なお、控除外額がある場合、市区町村によって調整給付されることとなるために会社としての対応は特にありません。
2024/12/03
2024年12月の税務に関する税務スケジュールを分かりやすくまとめております。
令和6年11月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納期
期限:12月10日(火)
10月決算法人の確定申告、4月決算法人の中間・予定申告
期限:1月6日(月)
2024/11/15
令和6年分年末調整 年調減税事務
前月の記事では令和6年分の年末調整関係書類の変更点についてお伝えしました。令和6年の年末調整では、定額減税の処理も必要となります(年調減税事務)。年末調整時点の定額減税の額を「年調減税額」といい、年調減税額を算出して年調所得税額から控除します。今回は年調減税事務の手順についてお伝えします。
1.対象者の確認
(1)「本人」の判定~年末調整の際に年調減税事務の対象となる人
年末調整の対象となる人が、原則として年調減税事務の対象者です。ただし、年末調整の対象となる人のうち、給与所得以外の所得を含めた合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる人については、年調減税額を控除しないで年末調整を行うことになります。
(2)「扶養している家族」の判定~何人分が控除できるか
配偶者については「配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書」、扶養親族については「扶養控除等(異動)申告書」から把握することができます。
2.年調減税額の計算
年調減税額は「本人3万円」と「扶養している家族1人につき3万円」の合計額です。
3.年調減税額の控除
年調減税額の控除は、住宅借入⾦等特別控除後の所得税額(年調所得税額)から、その住宅借入⾦等特別控除後の所得税額を限度に⾏います。上記のとおり通常の例により年末調整を⾏い、令和6年分源泉徴収簿の「年調所得税額㉔」欄を算出し、年調所得税額から年調減税額の控除を行います。年調減税額を控除した後の⾦額に102.1%を乗じて復興特別所得税を含めた年調年税額を算出した上で、過不⾜額の精算を⾏います。
4.源泉徴収票への表示
年末調整終了後に作成する「給与所得の源泉徴収票」には、その「(摘要)」欄に、実際に控除した年調減税額を「源泉徴収時所得税減税控除済額×××円」と記載します。また、年調減税額のうち年調所得税額から控除しきれなかった⾦額を「控除外額×××円」(控除しきれなかった⾦額がない場合は「控除外額0円」)と記載します。
2024/11/15
2024年11月の税務に関する税務スケジュールを分かりやすくまとめております。
令和6年10月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納期
期限:11月11日(月)
9月決算法人の確定申告、3月決算法人の中間・予定申告
期限:12月2日(月)
2024/10/11
令和6年分の年末調整関係書類の変更点が国税庁より公表されました。主な変更点をお伝えします。
1.主な変更内容
(1)追加事項
マル基・配・所の用紙に「年末調整に係る定額減税のための申告書」が加わり、用紙の名前が長くなりました。
基礎控除申告書と、配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書に年末調整で適用する定額減税の記載欄が追加されました。
↑基礎控除申告書
↑配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書
(2)削除事項
マル保の用紙に、これまで記載されていた「あなたとの続柄」の欄がすべて削除されました。
2.簡易な申告書(マル扶)
(1)簡易な申告書
源泉徴収手続の簡素化を図り納税者利便を向上させるという観点から簡易な申告書が創設されました。令和7年1月1日以後に支払を受けるべき給与等について提出するマル扶から提出できます。
(2)異動の有無の判定
氏名の変更、住所又は居所の移転、源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族の変動、寡夫や障碍者などの該当又は非該当、年齢の変動による控除区分の変動などが異動の有無の判定に関わってくるものです。
判定により異動がないとされれば、簡易な申告書を提出することができます。
(3)記載事項
簡易な申告書の記載事項は、申告書を提出する本人の、氏名・住所又は居所・マイナンバー(記載不要の場合は不要)・前年から異動がない旨のチェックとなっています。
※下図の水色の部分が記載事項となります。
※上記申告書は簡易対応様式のマル扶ですが、通常のマル扶でも簡易な申告書を提出することができます。そのため通常のマル扶のレイアウトが変更されています。
(4)書類の保存
簡易な申告書はその提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存する必要があります。前年の記載内容から異動がないかの確認のために、連年簡易な申告書の提出を受けたような場合には、最後に提出を受けた簡易な申告書以外のマル扶の内容が確認できるようにしておくことに注意が必要となります。