2022/01/12
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、2022年度の税制改正大綱が公表されました。今回の改正では、さまざまな改正案が提出されていますが、その中でも身近な改正案をご紹介します。
◆2022年度税制改正大綱
Ⅰ.住宅ローン減税
(1)入居に係る適用期限を4年間(令和4年~7年)延長。
(2)所得要件を合計所得金額3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げ。
(3)既存住宅の築年数要件(耐火住宅25年以内、非耐火住宅20年以内)について、
「昭和57年以降に建築された住宅」(新耐震基準適合住宅)に緩和。
(4)新築住宅の床面積要件について、令和5年以前に建築確認を受けたものは40㎡以上に緩和(合計所得金額1,000万円以下の者に限る)
(5)令和4年以降に入居する場合の措置は以下のとおり
①認定住宅等以外の場合
(イ)新築の場合
居住年 |
借入限度額 |
控除率 |
控除期間 |
令和4年・令和5年 |
3,000万円 |
0.7% |
13年 |
令和6年・令和7年 |
2,000万円 |
10年 |
(ロ)既存住宅の場合
借入限度額2,000万円、控除率0.7%、控除期間10年
②認定住宅等の場合
(イ)新築の場合
|
居住年 |
借入限度額 |
控除率 |
控除期間 |
認定住宅 |
令和4年・5年 |
5,000万円 |
0.7% |
13年 |
令和6年・7年 |
4,500万円 |
|||
ZEH水準住宅 |
令和4年・5年 |
4,500万円 |
||
令和6年・7年 |
3,500万円 |
|||
省エネ基準適合住宅 |
令和4年・5年 |
4,000万円 |
||
令和6年・7年 |
3,000万円 |
(ロ)既存住宅の場合
借入限度額3,000万円、控除率0.7%、控除期間10年
Ⅱ.賃上げ促進税制
(1)大企業向け
前年度から継続雇用している従業員の給与総額が前年度比3%以上増加した場合には雇用者全体の賃上げ額の15%を税額控除。また、前年度比4%以上増加した場合には25%の税額控除。
従業員の教育訓練費を前年度から20%以上増やした場合には控除率をさらに5%上乗せ。最大30%の控除となります。
(2)中小企業向け
新規雇用者も含めた雇用者全体の給与が前年度比1.5%以上増加した場合に、その増加額の15%を税額控除。また、前年度比2.5%以上増加した場合には30%の税額控除。
従業員の教育訓練費を前年度から10%以上増やした場合には控除率をさらに10%上乗せ。最大40%の控除となります。
※控除上限は法人税額等の20%。また、税額控除の対象となる給与等支給総額は雇用保険の一般被保険者に限られません。上記規定は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する事業年度から適用予定です。
Ⅲ.住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、適用期限が令和5年12月31日までと2年延長されます。非課税限度額は、
①耐震・省エネ・バリアフリー住宅のいずれかにあてはまる住宅であれば1,000万円
②上記以外の住宅であれば500万円となります。
なお、受贈者の年齢要件は贈与を受けた年の1月1日において18歳以上となります。
2021/11/15
❖令和4年1月から改正電子帳簿保存法スタート
電子帳簿保存法とは、原則、紙保存が義務づけられている帳簿書類について一定の要件のもと、電子データによる保存を認める法律です。令和4年1月施行の改正で、帳簿書類の保存要件の緩和、電子取引の電子データ保存の義務化、罰則規定の強化がなされました。
その中でも、義務化により対応が必須となる電子取引ついてご紹介いたします。
1.電子取引における電子データ保存の義務化
電子取引において、現状認められている紙での保存が廃止され、電子データのまま保存することが義務づけられました。令和4年1月から紙での保存は「不可」となります。
2.電子取引とは
電子取引とは、以下のような「取引情報の授受を電磁的方法により行う取引」をいいます。
3.保存すべきデータとは
紙でやりとりしていた場合に保存が必要な情報が含まれる電子データです。
(例)請求書、領収書、契約書、見積書、注文書、送り状など
4.電子データの保存要件
①上記(3)検索機能の確保の簡易な方法の具体例
◆表計算ソフトを使用する方法
表計算ソフト等で索引簿を作成することで、表計算ソフト等の機能を使って検索する方法です。
◆規則的なファイル名を付す方法
ファイル名に規則性をもって「日付・金額・取引先」を入力し、特定のフォルダに集約して、フォルダの検索機能が活用できるようにする方法です。
②上記(4)改ざん防止措置について
◆システム費用等をかけずに導入できる“改ざん防止のための事務処理規定”については、国税庁HPでサンプルを公表しています。
③市販のソフトウェア等を使用して保存する場合
◆電子データ保存の要件に対応するソフトウェア等も販売されています。
◆要件を満たすかどうか確認するための認証制度及び相談窓口があります。
❖電子保存に2年の猶予
12月6日、政府・与党の方針で令和4年1月に施行予定の電子帳簿保存法について、2年間の猶予期間を設けることになりました。しかし、電子データ保存の義務化に変更はありませんので、改正電子帳簿保存法に対応できるよう準備していきましょう。
< 編集後記 >
今回紹介した制度については、「国税庁HP▶電子帳簿保存法関係▶電子帳簿保存法Q&A」にてご確認いただけます。
不明な点等がございましたら当事務所担当者までお問合せください。
2021/10/11
今回は、令和3年分の年末調整時に提出する書類の変更点・留意点についてお話しさせていただきます。
1.押印義務の見直し
これまで年末調整の申告書には押印欄が設けられており、書面で提出する際は提出者の押印が必要でしたが、令和3年4月1日以後提出分から押印が不要となりました。
例えば扶養控除等(異動)申告書などの書類の、従来印字されていた「あなたの氏名」の欄の「㊞」が令和3年分の様式から削除されています。
2.年末調整の申告書を電子データ等で提出する場合の税務署長の承認廃止
年末調整の申告書を従業員から電子データで受領する場合、これまでは事前に税務署へ「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し税務署長の承認を受ける必要がありました。
改正により、令和3年4月1日以降に電子データで年末調整の申告書を受領する場合は、上記の事前承認が不要となりました。
ただし、別途必要な措置(従業員から電子データの提供を受けるための方法を定めておく等)がありますのでご留意ください。
※国税庁は10月1日に「年調ソフトV2.0」を公開しました。
年調ソフトは勤務先に提出する年末調整関係の書類を従業員が手軽に作成できるようにしたアプリです。質問に答えて控除証明書等のデータを入力すると提出のための電子データ等が作成できます。
3.年末調整の申告書作成の留意点
令和3年からの変更ではありませんが、令和2年分から提出が必要となったものについて説明します。
(1)所得金額調整控除申告書 ※(基・配・所)と右上に記載してある書類の左下にあります。
次のいずれかの要件に該当する給与年収850万円を超える人が所得金額調整控除を適用する際に提出(記入)します。
①本人、同一生計配偶者、扶養親族のいずれかが特別障害者に該当
②年齢23歳未満の扶養親族を有する
(2)給与所得者の基礎控除申告書 ※(基・配・所)と右上に記載してある書類の左側にあります。
その年の合計所得金額が2,500万円以下の人が基礎控除を適用する際に提出します。
(例)給与所得のみの場合
①(1)の収入金額欄に収入金額を記入
②裏面の給与所得の金額の計算方法の表に
金額をあてはめて算出した所得金額を
(1)の所得金額欄に記入
③②で算出した所得金額を控除額の計算の判定
の欄にあてはめてチェックをつける
④③で出た区分(ABC)を区分の欄に記入
⑤基礎控除の金額を判定の表をもとに記入
2021/09/15
❖令和3年10月~ インボイス制度の登録申請受付開始
令和5年10月1日から導入されるインボイス制度の登録申請受付が令和3年10月1日から開始されます。今回は、インボイス制度についてご紹介いたします。
1.適格請求書等保存方式(インボイス制度)の概要
インボイス制度では、インボイスを受領することが仕入側の仕入税額控除の要件として求められます。インボイスがないと仕入税額控除ができないため、仕入側では納付する税額が増えることになります。売手側はインボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者の登録が必要になります。(※令和11年9月まで経過措置あり)
参考:国税庁HP https://www.kinzei.or.jp/keigen/pdf/shinseikaishi20211001.pdf
2.適格請求書(インボイス)とは
売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるためのものです。具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」「適用税率」「消費税額等」の記載が追加されたものをいいます。
3.適格請求書発行事業者の登録
適格請求書を交付するためには、適格請求書発行事業者として税務署長の登録を受ける必要があります。登録申請書は、導入の2年前である令和3年 10 月1日からe-Taxを利用して提出できます。
参考:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm
参考:国税庁HP https://www.kinzei.or.jp/keigen/pdf/shinseikaishi20211001.pdf
4.適格請求書発行事業者の義務
・適格請求書発行事業者は、課税事業者として申告義務が生じます。
・売手である適格請求書発行事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、適格請求書を交付する義務及び交付した適格請求書の写しを保存する義務が課されます。
・買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である適格請求書発行事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。
5.免税事業者の登録手続き
免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、登録申請書に加えて「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要がありますが、令和5年10 月1日を含む課税期間中に登録を受ける場合は、登録を受けた日から課税事業者となる経過措置が設けられています。
2021/09/01
❖電子帳簿保存法 令和3年度税制改正について
令和3年度の税制改正において、経済社会のデジタル化を踏まえ、「経理の電子化による生産性の向上」「テレワークの推進」「クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上」のため、帳簿書類を電子保存する際の手続を抜本的に簡素化する観点から「電子帳簿保存法」の改正等が行われました。(令和4年1月1日施行)
今回は、電子帳簿保存法の改正内容についてご紹介いたします。
1.「電子帳簿保存法」とは
「電子帳簿保存法」とは、各税法で原則「紙での保存」が義務づけられている帳簿書類について一定の要件を満たした上で「電子データによる保存」を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律です。
電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は、大きく以下の3種類に区分されています。
区分 |
概要 |
①電子帳簿等保存 |
会計ソフトなどで電子的に作成した帳簿や電子的に作成した書類をデータのまま保存 |
②スキャナ保存 |
受領又は作成した紙の書類を画像データ化して保存 |
③電子取引 |
授受した取引情報のデータをデータで保存 |
2.令和3年度税制改正
令和3年度税制改正より見直された電子帳簿保存に関する改正は、次の通りです。
区分 |
項目 |
概要 |
① 電子帳簿等保存 |
承認制度の廃止 |
これまで必要であった税務署長への事前承認が不要に |
最低限の要件を満たせば電子保存が可能 |
複式簿記による記録であれば、最低限の要件を満たすことで、電子保存をすることが可能に |
|
優良な電子帳簿の ペナルティ軽減措置 |
「優良な電子帳簿」の保存要件を満たし、かつ、あらかじめ本措置適用の届出書を提出しているときは、 ・ 過少申告加算税5%軽減 ・ 65万円の青色申告特別控除の適用が可能 |
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② スキャナ保存 |
承認制度の廃止 |
これまで必要であった税務署長への事前承認が不要に |
要件の緩和 |
・ タイムスタンプ※の付与期間が最長約2か月以内に ・ 受領者等の自署が不要に ・ 検索要件の緩和 ・ 一定のクラウド等を利用することでタイムスタンプが不要に (※)タイムスタンプ…書類作成日付を確認するための時刻証明サービス |
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要件の廃止 |
相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等の適正事務処理要件が廃止(スキャン後即原本廃棄が可能に) |
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不正によるペナルティ加重措置 |
電子保存に関して不正があったときは重加算税10%加重 |
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③ 電子取引 |
要件の緩和 |
・ タイムスタンプの付与期間が最長約2か月以内に ・ 検索要件の緩和※ (※)基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合で一定の要件に該当するときは検索要件すべて不要 |
書面印刷による代替保存の廃止 |
所得税や法人税において電子取引の取引情報を紙に印刷して保存する代替制度が廃止(消費税は引き続き可能) |
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不正によるペナルティ加重措置 |
電子保存に関して不正があったときは重加算税10%加重 |
改正により、導入の足枷となっていた要件が緩和・廃止され取り入れやすくなった一方、不正によるペナルティが重くなりました。
また、実務において影響が大きいと考えられるのは、「電子取引情報の紙印刷代替保存の廃止」ではないでしょうか。たとえば、電子メールで請求書データを受け取り、それを紙に印刷して保存されている事業者にあっては、来年1月から所得税や法人税において認められなくなりますのでご注意ください。