2022/07/11
今回は、来年に期限を迎える3つの贈与税の非課税制度についてご紹介させていただきます。
1.3つの非課税制度について
政策税制として、下記の3つの贈与税の非課税制度があります。
非課税制度 |
特徴 |
教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税 |
高齢世代の貯蓄を子育て世代へ早期に移転することを通じて、教育費用の負担を軽減させつつ、消費を活性化させる |
結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税 |
高齢世代の貯蓄を、将来の経済的不安がある若年世代へ早期に移転することを通じて、若年層の結婚・妊娠・出産・子育て資金の負担を軽減させる |
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税 |
高齢世代の貯蓄を若年世代の住宅取得等のための資金に移転することにより若年世代の住宅の取得をしやすくさせる |
2.教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(令和5年3月31日まで)
■概要:親・祖父母が金融機関の子・孫名義の専用口座に教育資金を一括して拠出した場合には1,500万円(うち学校等以外は500万円)まで非課税となります。
■適用期間:平成25年4月1日~令和5年3月31日
■受贈者:子・孫(0歳~30歳未満、合計所得金額1,000万円以下)
■贈与者死亡時:死亡時の残高を相続財産に加算※1
■契約終了時※2:残高に対して、贈与税を課税(改正により課税対象拡大)
※1 受贈者が①23歳未満である場合、②学校等に在学中の場合、③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合には加算の対象外
※2 ①30歳に達した日(学校等に在学・教育訓練を受講中の場合を除く)、②30歳に達した日後に年間で学校等に在学・教育訓練を受講した日がなかった年の年末、③40歳に達した日、④信託財産等が零になった場合において教育資金管理契約を終了させる旨の合意に基づき終了する日、のいずれか早い日
3.結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(令和5年3月31日まで)
■概要:親・祖父母が金融機関の子・孫名義の専用口座に結婚・子育て資金を一括して拠出した場合には、
1,000万円(うち結婚資金は300万円)まで非課税となります。
■適用時期:平成27年4月1日~令和5年3月31日
■受贈者:子・孫(18歳~50歳未満、合計所得金額1,000万円以下)
■贈与者死亡時:死亡時の残高を相続財産に加算
■契約終了時※:残高に対して、贈与税を課税
※ ①50歳に達した日、②信託財産が零になった場合において結婚・子育て資金管理契約を終了させる旨の合意に基づき終了する日、のいずれか早い日
4.住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置(令和5年12月31日まで)
■概要:親・祖父母等から住宅取得等の資金の贈与を受けた場合、非課税限度額まで非課税となります。
■適用時期:令和4年1月1日~令和5年12月31日
■受贈者:子・孫(合計所得金額2,000万円以下、18歳以上)
■住宅面積:床面積50㎡以上240㎡以下の住宅用家屋
(合計所得金額1,000万円以下の者は下限を40㎡以上)
■非課税限度額(令和4年1月1日~令和5年12月31日)
住宅の区分 |
非課税限度額 |
一定の耐震性能、省エネ性能又はバリアフリー性能を有する住宅 |
1,000万円 |
上記以外の住宅 |
500万円 |
(注)既存住宅は①耐震基準に適合していること又は②昭和57年以降に建築されていることが必要
(注)原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得等する必要がある
編集後記
今回のテーマは格差固定化を防ぐ等の目的で見直しが示唆されており、これまでも適用期限が延長されてきましたが、今のところいずれも来年に適用期限を迎えることから紹介させていただきました。なお、適用には細かい要件もありますのでご注意ください。
2022/06/14
◆インボイス制度に対応する補助金
令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式として「インボイス制度」が開始します。これに伴い、令和4年度の中小企業生産性革命推進事業では、持続化補助金とIT導入補助金を対象に、インボイス制度への対応を支援する方針を定めました。今回は、これら2つの補助金の概要についてご紹介いたします。
1.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者に対して通常枠で最大50万円(補助率2/3)が支給される小規模事業者持続化補助金には、インボイス制度が開始されることを受けて「インボイス枠」などの特別枠が設けられています。インボイス枠では、小規模事業者が免税事業者からインボイス発行事業者に転換する場合に、補助上限額が100万円に引き上げられます。
<補助上限額と補助率 等>
<インボイス枠申請要件>
2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、インボイス(適格請求書)発行事業者の登録が確認できた事業者であること。ただし、補助事業の終了時点でこの要件を満たさない場合は、補助金の交付は行いません。
2.IT導入補助金2022
中小企業や小規模事業者がITツール導入に活用できる「IT導入補助金」に、通常枠に加えて「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」などが追加されました。インボイス制度への対応を見据えて、企業間のデジタル化を一挙に推進するため、会計ソフト・決済ソフト・ECソフト等のITツール(ソフトウェア)に加えて、パソコン・タブレット端末・レジ・券売機等のハードウェア導入費用を優先的に支援する制度です。通常枠よりも補助率が引き上げられています。
<デジタル基盤導入類型:補助額と補助率 等>
<申請時の注意点>
IT導入補助金を申請するにあたっては、事務局に登録されたIT導入支援事業者とともに、自社の生産性向上に寄与する適切なITツールを選択し、申請することが必要となります。
IT導入支援事業者についてはIT導入補助金HPからご確認が可能です。
2022/06/14
◆適格請求書保存方式(インボイス制度)に係る見直し
令和4年4月に消費税法等の一部が改正されました。今回は、令和5年10月から始まる適格請求書保存方式(インボイス制度)に係る主な改正内容をご紹介いたします。
1.免税事業者の適格請求書発行事業者の登録に関する経過措置の適用期間の延長
免税事業者が、令和5年10月1日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受けた場合は、登録を受けた日から適格請求書発行事業者となることができる経過措置が設けられていますが、当該経過措置の適用期間が延長され、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間においても、登録を受けた日から適格請求書発行事業者となることができることとされました。
なお、上記経過措置の適用を受けた場合、登録を受けた日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは、免税事業者となることはできません。(登録を受けた日が令和5年10月1日の属する課税期間中である場合を除く)
<事業者免税点制度(基準期間の課税売上高1,000万円以下の納税義務免除)の不適用>
登録を受けた日とは、適格請求書発行事業者登録簿に登載された日となりますので、登録を受ける場合には早めに「登録申請書」を提出されてください。
なお、インボイス制度開始日(令和5年10月1日)から適用を受ける場合の提出期限は令和5年3月31日となっておりますのでご留意ください。
2.仕入明細書による仕入税額控除の適用要件の見直し
インボイス制度開始後は、買手(課税事業者)が作成する一定の要件を満たした仕入明細書等を保存することによる仕入税額控除の適用について、売手(課税仕入れの相手方)において課税資産の譲渡等に該当するもののみが対象とされました。
3.経過措置期間における棚卸資産の調整の見直し
免税事業者である期間において行った課税仕入れについて、適格請求書発行事業者から行ったものであるか否かにかかわらず、免税事業者が課税事業者となる日の前日において有する棚卸資産に係る消費税額の全額について、仕入税額控除の適用を受けることができることとされました。
免税事業者等からの課税仕入れについては、経過措置として令和5年10月1日から令和8年9月30日までは80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは50%が仕入税額控除できます。ただし上図のように、経過措置期間中に免税事業者が行った免税事業者等からの課税仕入れについて、課税事業者となる日の前日において棚卸資産として保有しているときは、その棚卸資産に係る消費税額の全額が、課税事業者となった課税期間の仕入税額控除の対象となります。
< 編集後記 >
インボイス制度に関して国税庁のHPにて特集サイトが設けられております。
(国税庁HP▶注目ワード「消費税のインボイス制度」)
ご不明な点がございましたら、当事務所担当者までお問い合わせください。
2022/04/11
新年度の4月1日から、さまざまな法律や制度が変わりました。そこで今回は何が変わったのかを身近なものを中心にお知らせします。
◆2022年4月1日から変わったもの
1.民法上の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました
民法改正で成人年齢が約140年ぶりに見直され、20歳から18歳に引き下げられました。また、婚姻年齢は男女ともに18歳以上に統一されました。成人年齢の引き下げにより、相続税、贈与税などに影響がでることとなります。
①未成年者控除
相続人の中に未成年者がいる場合に、その未成年者に対し相続税が一定額控除される制度で、控除の額は未成年者が成人するまでの年数に10万円を乗じた額になりますので、今までと比べて控除できる相続税額が2年分(20万円)少なくなりました。
②相続時精算課税適用者の要件
原則60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。この制度の適用を受けることができる者の年齢が、贈与の年の1月1日において20歳以上の者(令和4年3月31日以前)から18歳以上の者となったため2年早く適用が受けられるようになりました。
③事業承継税制に係る受贈者の要件
事業承継制度の適用に係る受贈者の年齢要件が20歳以上から18歳以上に引き下げられました。
④その他の贈与税
次の特例制度の適用に係る受贈者の年齢要件が20歳以上から18歳以上に引き下げられました。
イ.贈与税の税率の特例⇒直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税は特例税率を適用するという制度
ロ.直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置⇒
結婚・子育て資金に充てるために直系尊属から信託受益権の付与等を受けた場合に1,000万円まで贈与税を非課税とする制度
2.賃上げ促進税制の見直し(旧、所得拡大促進税制)
積極的な賃上げ等を促す観点から税額控除額が、大企業については最大30%、中小企業については最大40%に引き上げられました。
3.雇用保険料率
雇用保険料率は労使で以下のように変更になっています。
|
令和3年度 |
令和4年4月1日~ 令和4年9月30日 |
令和4年10月1日~ 令和5年3月31日 |
一般の事業 |
9/1,000 |
9.5/1,000 |
13.5/1,000 |
農林水産・清酒製造の事業 |
11/1,000 |
11.5/1,000 |
15.5/1,000 |
建設の事業 |
12/1,000 |
12.5/1,000 |
16.5/1,000 |
4.金融教育の導入
高校の家庭科の授業において、資産形成の視点に触れた金融教育が必修となります。
普段のお金の使い方から今後の長い人生を見据えた資金計画など、幅広く金融に関する知識や技能を身につけるのが目的とされています。
5.年金制度の改正
公的年金支給額が令和3年度に比べて原則0.4%引き下げられます。受給開始年齢は今まで60歳~70歳であったものが60歳~75歳に拡大されます(繰下げ受給の上限年齢引上げ)。また、65歳以上70歳未満で厚生年金に加入しながら勤務している場合に毎年1回年金額を見直す在職定時改定が導入されます。
6.育児・介護休業法の改正
育児休業を取得しやすい雇用環境の整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
7.道路交通法施行規則の改正
一定台数以上の白ナンバー車両を業務で使用する事業者に、運転前後の目視での酒気帯びの有無の確認、記録保存が義務化されました。
2022/03/31
◆賃上げ促進税制の見直し(※旧、所得拡大促進税制)
令和4年度税制改正では、中小企業の積極的な賃上げ等を促す観点から賃上げ促進税制について、適用期限が1年延長され税額控除率の上乗せ措置が見直されました。今回は、賃上げ促進税制ついてご紹介いたします。
中小企業向け「賃上げ促進税制」とは
青色申告を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
令和4年度税制改正での見直しの概要
中小企業については、現行の適用要件に変更はなく、税額控除率の上乗せ措置の見直しが行われます。これにより、中小企業においては、給与支給増加額などに対して最大25%の税額控除だったものが、最大40%に引き上げられる見込みです。
①雇用者給与等支給額が前期比で2.5%以上増加した場合は、税額控除率に15%が上乗せ
②教育訓練費の額が対前年比で10%以上増加した場合は、税額控除率に10%が上乗せ
※この上乗せ措置の適用を受ける場合、教育訓練費の明細を記載した書類の保存をしなければならないこととされています。(現行:確定申告書等への添付)
<改正による変更点>
※大企業向け賃上げ促進税制においては、適用要件が新規雇用者の給与等支給額から継続雇用者の給与等支給額に変更があったほか、継続雇用者給与等支給額が前期比4%以上増加した場合に税額控除率を10%上乗せできるようになります。(最大30%の控除)
※この内容は令和3年12月の政府決定時点のもので、今後の国会審議等を踏まえて施策内容が変更となる可能性があります。
< 編集後記 >
今回ご紹介した賃上げ促進税制については、中小企業庁のHPで「制度詳細については後日公開」となっておりますのでご確認下さい。
(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html)
ご不明な点がございましたら、当事務所担当者までお問い合わせください。