2024/03/28
令和6年度の税制改正では、所得税と住民税の定額減税が決まりました。
定額減税の概要と給与支払者の場合の定額減税事務についてご案内します。
Ⅰ.定額減税の概要
対象者 居住者で令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下である人
減税額 本人、同一生計配偶者及び扶養親族(居住者のみ、以下、扶養親族等)
1人につき、所得税3万円、個人住民税1万円
給与の支払者は、以下の二つの事務を行うことになります。
①令和6年6月1日以後に払う給与等に対する源泉徴収税額からその時点の定額減税額を控除する事務
(以下「月次減税事務」)
②年末調整の際、年末調整時点の定額減税額に基づき精算を行う事務
Ⅲ.月次減税事務の手順
月次減税事務は次の手順で行います。
①控除対象者の確認
令和6年6月1日現在、勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される
居住者の人(以下「基準日在職者」)を選び出します。
②各人控除実績簿の作成
基準日在職者の各人別の月次減税額と各月の控除額等を管理することになります。国税庁HPに「各人別控除実
績簿」が掲載されているのでご活用ください。
③月次減税額の計算
④給与支払時の控除
[計算例]
(出典:国税庁HP)
⑤控除後の事務
給与支払明細書への控除額の表示:適宜の箇所に「定額減税額××円」などと表示
2024/02/09
今年も、確定申告の時期が近づいてきました。
今回は、令和5年分の所得税確定申告の主な変更点をご紹介します。
Ⅰ.個人住民税の改正に伴う様式の変更
令和6年度の個人住民税から、上場株式等に係る配当所得等及び譲渡所得等の申告における課税方式を、所得税と一致させることになりました。例えば、これまで上場株式等に係る配当所得について、所得税は総合課税、個人住民税は確定申告不要などと別々の課税方式を選択できましたが、これができないことになります。これにより、令和5年分以降用の所得税の申告書第二表の様式が一部変更されています。
〈令和4年分-変更前〉
〈令和5年分-変更後〉
(出典:国税庁HP)
Ⅱ.総合課税の対象となる者の改正
上場株式等に係る配当所得について、必ず総合課税となる者の定義が次の通り見直されました。
改正前 (R5.9.30までに支払を受ける配当等) |
改正後 (R5.10.1以降に支払を受ける配当等) |
発行済株式総数等の3% 以上を保有する個人 |
同族会社保有分と合算して発行済株式総数等の3%以上を保有する個人 |
これにより、仮に改正後に総合課税の対象となる配当が特定口座(源泉徴収選択口座)内で源泉徴収されていたとしても、総合課税として確定申告が必要となります。
Ⅲ.青色申告決算書等の様式変更
事業所得を申告する場合の青色申告決算書に、売上金額や仕入金額の明細を記入する欄が新設されました。
(出典:国税庁HP)
また、収支内訳書にある売上金額や仕入金額の明細欄に、登録番号(法人番号)の記入欄が新設されました。
以上、主な変更点になりますが、その他、納税地変更の届出書の提出が不要になったなど、細かい変更点もございますので、国税庁のHP等をご確認ください。
2024/01/23
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申しあげます。
さて、2024年度の税制改正大綱が公表されました。今回の改正では、さまざまな改正案が提出されていますが、その中でも身近な改正案をご紹介します。
◆2024年度税制改正大綱
Ⅰ.所得税・個人住民税の定額減税
(1)趣旨 賃金上昇が物価高に追いついていない中、国民の負担を緩和するため、令和6年分の所得税及び個人住民税の減額を行うというものです。
(2)適用期間 令和6年6月1日以後適用される予定です。
(3)内容
①所得税は、居住者の令和6年分の所得税額から控除されます。(その者の所得税額が上限) 本人3万円、同一生計配偶者及び扶養親族1人につき3万円
②個人住民税は、納税義務者の令和6年度分の所得割の額から控除されます。(その者の所得割の額が上限) 本人1万円、控除対象配偶者及び扶養親族1人につき1万円
なお、令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下である者という所得制限があります。
Ⅱ.交際費等から除外される飲食費に係る見直し
(1)内容 交際費等の損金不算入制度について、損金不算入となる交際費等の範囲から
除外される一定の飲食費に係る金額基準を1人あたり1万円以下(現行5千円以下)に引き上げる。
(2)適用期間 令和6年4月1日以後適用される予定です。
Ⅲ.賃上げ促進税制(中小企業)
(1)内容
①中小企業の賃上げ促進税制に繰越控除制度が新設され、当期に控除できなかった税額控除の額を5年間に渡って繰り越せるようになります。
② 教育訓練費を増加させた場合の上乗せ要件が緩和されます。子育てサポート、女性の活躍推進に積極的に取り組んだ企業に対する上乗せ措置が設けられます。
(2)適用期間 令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度
Ⅳ.中小企業倒産防止共済事業に係る措置
(1)内容 中小企業倒産防止共済の共済契約の解除をした後に再契約をした場合に、解除の日から2年を経過する日までの間に支出する共済契約に係る掛金は損金算入ができなくなります。
(2)適用期間 令和6年10月1日以後の共済契約の解除について適用される予定です。
Ⅴ.事業承継税制 特例承継計画等の提出期限の延長
(1)内容 事業承継の検討が遅れている状況を踏まえ、個人事業承継計画・特例承継計画の提出期限を2年延長し令和8年3月31日までとする。(改正前は令和6年3月31日まで)。
(2)注意 計画の提出期限は延長されましたが、特例措置の適用期限は延長されていないので注意が必要です。
Ⅵ.住宅ローン控除(子育て世帯等に対する措置)
(1)内容 縮小予定の住宅ローン控除について、子育て特例対象個人が認定住宅等の新築等をして令和6年中に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額を次のとおりとします。
住宅の区分 |
借入限度額 |
認定住宅 |
5,000万円 (4,500万円) |
ZEH水準省エネ住宅 |
4,500万円 (3,500万円) |
省エネ基準適合住宅 |
4,000万円 (3,000万円) |
※借入限度額の()書きの中の金額は子育て特例対象個人以外の者の金額です。
(2)対象者 個人で年齢40歳未満であって配偶者を有する者、年齢40歳以上であって、年齢40歳未満の配偶者を有する者又は年齢19歳未満の扶養親族を有する者。
2023/12/11
改正電子帳簿保存法 2024年からの電子取引データ保存
電子取引データ保存の対応はお済みでしょうか。紙での保存を認める経過措置は2023年末で終了し、2024年1月からは電子データでの保存が必須です。ただし、令和5年度税制改正により新たな猶予措置も登場しました。どうすれば改正に対応できるのか、猶予措置も含め貴社にあった対応策をご検討ください。
1.新たな猶予措置
令和5年度税制改正により、ルールに従った電子取引データの保存の対応が間に合わなかったことに「相当の理由」がある場合には、一定の条件のもとに、2024年1月から始まる新たな猶予措置を受けることができます。
以下の(1)と(2)を満たす場合には、電子取引データを保存しておくだけで大丈夫です。
(1)電子取引データ保存の一定のルールに従って電子取引データを保存することができなかったことについて、
所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請は不要です。)
相当な理由とは?
・システムや社内のワークフローなどの整備が間に合わない場合
・ルールに従って保存できる環境は整っているが、資金繰りや人手不足などの理由で、ルールに従った保存が
できない場合
(2)税務調査の際に、以下①②に応じることができるようにしている場合
①電子取引データのダウンロードの求め
②電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求め
2.ルールに従った保存はできていますか? フローチャートで確認!
出典:国税庁HP
2023/11/29
ふるさと納税の受入総数について総務省の公表によると令和4年度の実績は約9,654億円、約5,184万件となり、対前年度比約1.2倍となり平成20年のふるさと納税導入後、最も多い金額となりました。
今年も残すところわずかとなり、ふるさと納税の駆け込み寄付が増える時期となりましたので、ここで改めてふるさと納税についてご紹介します。
1.ふるさと納税の概要
(1)ふるさと納税とは
ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)を行った場合に、寄付額のうち2,000円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です(一定の上限あり)。
(2)寄付できる上限額の計算式
控除限度額=(個人住民税所得割額×20%)÷(90%-所得税率×1.021%)+自己負担金2,000円
※個人住民税所得割額とは、住民税のうち所得額に応じて課税されている部分を言い毎年5月~6月に送られてくる住民税決定通知書のなかに記載されています。
上記の通知書はあくまで去年の所得割額なので、今年の所得が去年より大きく変わった場合には注意が必要です。
(3)寄付金控除の適用方法
ふるさと納税は原則、確定申告を通じて適用されます。この場合は確定申告書に寄附金受領証明書を添付し、寄付した年の翌年2月16日から3月15日までの期間内に税務署に提出します。
一方、確定申告をする必要がない方で、ふるさと納税の寄付先の自治体数が5団体以内の場合には、ワンストップ特例制度が適用できます。寄附金税額控除に係る申告特例申請書に必要事項を記入して本人確認書類を添付し、寄付した翌年の1月10日までにふるさと納税を行った各自治体に申請します。
(4)12月にふるさと納税をする場合の注意点
12月にふるさと納税をする場合には自治体の受領日に注意が必要です。年内にふるさと納税を行っても自治体の受領日が年をまたいでしまうと寄付金額がその年の所得からではなく翌年の所得から控除されることになってしまいます。そのためその年の所得から控除を受けようとするのであれば、12月31日までに入金完了となるようにふるさと納税を行う必要があります。入金方法としては、自治体やふるさと納税サイトによって異なりますが駆け込みで行う場合は、決済完了日が入金日となるクレジットカードやスマホ決済が決済サービスのポイントも貯まるのでおすすめです。
2.2023年10月からのふるさと納税の改定内容
ふるさと納税の次期指定に向けた見直しについて、今年の10月から必要経費のルールの厳格化と地場産品の基準の厳格化が総務省より発表されました。内容は次の通りです。
① 地方自治体がふるさと納税のために使用できる経費がワンストップ特例事務の費用等も含めて寄付金額の5割以下とすること。
② 加工品のうち熟成肉と精米の返礼品について原材料がその地方自治体と同一の都道府県内産であること。
③ 返礼品として地場産品とそれ以外のものをセットにする場合に地場産品は全体価格の7割以上であること。
上記の改定により、今年9月までと同じ返礼品を受け取るための寄付金額の増加、返礼品の質や量、種類の減少が発生すると考えられます。しかし、それでも返礼品がもらえるのはお得であることに変わりはないのでふるさと納税に興味がある方はぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか?