2021/03/10
❖ 緊急事態宣言の発令を受けた福岡市の支援策について
本年2月28日に緊急事態宣言が解除されたことに伴い、福岡県の緊急事態措置も2月28日迄に短縮されましたが、今回の緊急事態宣言の発令を受け、福岡市は売上が減少した事業者などに独自に給付金を支給するなど、新たな支援策を実施することを発表しています。
今月号の事務所通信では、これらの支援策からいくつかご紹介します。
(※事業によっては補正予算の成立を前提としており、内容等が変更になる場合があります。)
Ⅰ. 売上が減少した事業者への支援
緊急事態宣言に伴い、飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受け売上が減少した事業者のうち、国や県の一時金等の対象とならない事業者に対し、法人は15万円、個人事業者は10万円を上限に支援します。
● 対象事業者
国の「緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金」(以下「国の一時金」という。)や「福岡県感染拡大防止協力金」(以下「県の協力金」という。)の支払対象とならない事業者のうち、以下のいずれかに該当する事業者
⑴ 国の一時金の対象(※注)であり、2021年の1月から3月のいずれかの月の売上が2019年又は2020年の同月に
比べ30%以上50%未満減少したこと
⑵ 国の一時金の対象(※注)でなく、2021年の1月から3月のいずれかの月の売上が2019年又は2020年の同月に
比べ50%以上減少したこと
※注)国の一時金の対象とは、緊急事態宣言の再発令に伴い、緊急事態宣言の発令地域(以下「宣言地域」という。)の飲食店と直接・間接の取引がある、又は、宣言地域における不要不急の外出・移動の自粛による直接的な影響を受けた事業者のことをいいます。
● 支援内容
法人:上限15万円
個人事業者:上限10万円
※法人又は個人事業者につき、受給は1回とします。
● スケジュール
申請受付開始:令和3年3月10日(水)※オンライン申請は、3月中旬から下旬に受付開始予定です。
支給開始(予定):令和3年3月中旬以降
申請締切(予定):令和3年6月14日(月)
Ⅱ. 感染症対応シティ促進事業(中小企業等の感染症対策強化)
市民に商品販売やサービス提供を行う来店型の施設等を対象に、感染症対策強化の取り組みにかかる物品・サービス導入経費や工事経費の3分の2、上限60万円(うち、物品・サービス導入経費は上限20万)を支援します。
● 対象事業者
以下の要件を満たす事業者が対象となります。
⑴ 来店型の施設・店舗等を福岡市内に有する中小企業・小規模事業者等。
⑵ 申請日時点で福岡市内に店舗施設等を運営・営業している者。
⑶ 市税に係る徴収金に滞納がない者。又は市税の徴収猶予の特例制度等の対象となる者。
⑷ 新型コロナウイルス感染症にかかる各種業界別ガイドラインを遵守し、感染症対策を行っている者。など
● 支援内容
新型コロナウイルス感染症にかかる各種業界別ガイドライン等に示す感染症対策強化に資する工事や物品・サービス導入に必要な経費の3分の2、上限60万円(うち、物品・サービス導入経費は上限20万円)を支援します。
① 工事経費
・客席用間仕切板の設置、自動水栓の設置、換気機能を搭載したエアコンの設置
・非接触型センサー付きトイレへの改修、三密を避けることを目的としたレイアウト変更、テイクアウト専用カウンターへの改修など
(※市内の施工業者による施工に限ります。)
② 物品・サービス導入経費
・空気清浄機(HEPAフィルタによるもの)、換気に資するサーキュレーター、サーモカメラ
・実際の来店時において感染症対策強化に資するデジタル対応ツール(キャッシュレス決済サービス等)など
(※マスクや消毒液等の消耗品は対象外となります。)
● 申請手続き
1事業者につき、申請は原則1回まで
● 申請期間
令和3年3月10日(水)から令和3年6月30日(水)まで
※工事経費は、交付決定後に着手するものが対象となります。
※物品・サービス導入経費については、令和3年2月25日(木)以降に購入したものが対象になります。
❖❖❖ 消費税の総額表示について ❖❖❖
★令和3年4月1日より、 税込価格の表示(総額表示) が必要になります!
・事業者が消費者に対して行う価格表示が対象です。
・店頭の値札・棚札などのほか、チラシ、カタログ、広告など、どのような表示媒体でも、対象となります。
◇ 総額表示に《該当する》価格表示の例 |
◇ 総額表示に《該当しない》価格表示の例 |
・10,780円 ・10,780円(税込) ・10,780円(うち税980円) ・10,780円(税抜価格9,800円) ・10,780円(税抜価格9,800円、税980円) ・9,800円(税込価格10,780円)
*税込価格が明瞭に表示されていれば、消費税額や税抜価格を併せて表示することも可能です。 |
・9,800円(税抜) ・9,800円(本体価格) ・9,800円+税
*平成25年10月に施工された消費税転嫁対策特別措置法により、令和3年3月31日までは上記のような価格表示も認められていますが、令和3年4月1日以後は、総額表示が必要になります。 |
◆編集後記◆
今回ご紹介した支援策を含め、令和3年1月の緊急事態宣言の発令を受けた福岡市独自の支援策については、
福岡市のHP(https://www.city.fukuoka.lg.jp/shicho/koho/kinkyu202101.html)でもご確認頂けます。
当該支援策の適用を検討される方は、当事務所担当者までご相談ください。
2021/02/15
ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除に関する改正
1.ひとり親控除
これまでの寡婦(寡夫)控除は、配偶者と離婚や死別をした人、つまり婚姻歴がある人を対象にしたものでした。そのため婚姻歴があれば控除が受けられ、婚姻歴がなければ控除が受けられないという不平等が生じていました。
そこで、2020年分からは「ひとり親控除」という控除が創設され、シングルマザーまたはシングルファーザーであれば、婚姻歴があってもなくても35万円の控除が受けられるようになりました。
ひとり親控除が受けられる要件は次のようになっています。
①その人と生計を一にする子(注1)を有すること。
②合計所得金額が500万円以下であること。
③その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人(注2)がいないこと。
(注)1 その人と生計を一にする子とは、他の人の同一生計配偶者又は扶養親族とされている人以外で、その年分の総所得金額等の額が48万円以下の子をいいます。
2 住民票に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載がある人は控除を受けることができません。
2.寡婦(寡夫)控除の見直し
寡婦の要件について、①扶養親族がいる②合計所得金額が500万円以下である③その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないことというように、これまでの①の要件に②③の要件を追加した上で、寡婦(寡夫)控除をひとり親に該当しない寡婦に係る寡婦控除に改組されました。
また、「特別の寡婦」に該当する場合の寡婦控除の特例が廃止されました。
3.適用判定のフロー図
※国税庁のHPより
4.まとめ
2020年分の確定申告から「ひとり親控除」が新設されて、寡婦控除は範囲が縮小され寡夫控除はなくなります。これまで寡婦(特別の寡婦ではない)として寡婦控除を受けていた人で所得が500万円を超える人は控除が受けられなくなります。また、事実婚の状態にある人はいずれの控除も受けることができません。
2021/01/15
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、2021年度の税制改正大綱が公表されました。今回の改正では、新型コロナウイルスで打撃を受けた企業や個人の負担を和らげるための措置や特例の創設・延長等、さまざまな改正案が提出されています。その中でも身近な改正案をご紹介します。
◆2021年度税制改正大綱
Ⅰ.住宅ローン控除の特例の延長等
消費税率10%引上げに伴う反動減対策の上乗せ措置である控除期間13年間の特例措置の適用期限を延長し、令和4年末までの入居者を対象とするとともに、この延長した部分に限り、合計所得金額 1,000万円以下の者について床面積要件を40 ㎡以上に緩和されます。
ただ、今後の留意点として、住宅ローン控除の控除率(1%)を下回る借入金利で住宅ローンを借り入れているケースが多く、その場合、毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払利息額を上回っていること等が問題視されています。
例)住宅取得のため3,000万円を金利0.8%で借り入れた場合
住宅ローン支払利息 3,000万円×0.8%=24万円
住宅ローン控除 3,000万円× 1%=30万円
→ 支払った利息よりも6万円多く税額控除されている。
この点につき、令和4年度税制改正において控除額や控除率の在り方を見直すと言及されています。
Ⅱ.土地に係る固定資産税等の負担調整措置
令和3年度は、3年に一度の固定資産税の評価替えの基準年度にあたるため、本来であれば適正な時価に見直しがされ、固定資産税が課税されることになります。しかし、コロナの影響を鑑みて、宅地等及び農地の負担調整措置(固定資産税等の負担が急激に増えないよう課税標準額を段階的に引き上げる仕組み)について、令和3年度から令和5年度までの間、現行の負担調整措置の仕組みを継続し、その上で、令和3年度に限り、負担調整措置等により税額が増加する土地について、前年度の税額に据え置く特別な措置が講じられます。
Ⅲ.中小企業の所得拡大促進税制の見直し
中小企業における所得拡大促進税制について、給与等の支給額の増加割合の判定が継続雇用者(前期及び当期に渡り給与等の支給を受ける一定の者)への給与等の支給額から、雇用者全体の給与等支給額に着目した要件に見直され、その適用期限が2年間延長されます。
Ⅳ.中小企業の経営資源の集約化に資する税制
M&A(企業の合併買収)に関する経営力向上計画の認定を受けた中小企業者が、中小企業者の株式の取得後に簿外債務、偶発債務等が顕在化するリスクに備えるため、準備金を積み立てたときは、損金算入が認められます。さらに、M&A後の積極的な投資や雇用の確保を促す観点から、同計画に必要な事項を記載して認定を受けた中小企業者は、所得拡大促進税制の上乗せ要件に必要な計画の認定も不要となります。
上記以外の改正点については、必要に応じて来月号以降でご紹介して参ります。
なお、今後の国会における審議の過程において、項目の修正・削除・追加などが行われる可能性がありますのでご留意ください。
ご不明な点がございましたら、当事務所担当者までお問い合わせください。
2020/12/10
❖令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書・配偶者控除等申告書の書き方について
令和2年の年末調整から、『給与所得者の基礎控除申告書 (兼) 給与所得者の配偶者控除等申告書 (兼) 所得金額調整控除申告書』という新たな書類が加わりました。これは従来の「配偶者控除等申告書」に、「基礎控除申告書」・「所得金額調整控除申告書」が追加されたものです。
今月号の事務所通信では、これらの申告書のうち、「基礎控除申告書」及び「配偶者控除等申告書」の書き方についてご紹介します。
Ⅰ. 給与所得者の基礎控除申告書の記入(*ほとんどの方が記入)
令和2年から「基礎控除額」が改正され、合計所得金額(見積額)が2,500万円を超える所得者については基礎控除の適用を受けることができない、とされました。
つまり、令和2年中の合計所得金額(見積額)が2,500万円以下ならば基礎控除の対象となり、給与所得者のほとんどの方が提出(記入)の対象になります。
(出典:国税庁「《記載例》令和2年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」より抜粋)
❶〈あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算〉欄の記入について
⑴ 直近の給与支払明細書などを参考にして、「給与の収入金額」(給与や賞与を合計した税引前の年収)の見積額を、〈収入金額〉欄に記入します。
⑵ 申告書【裏面】の【給与所得の金額の計算方法】を参考にして、「給与所得の金額」を計算、〈所得金額〉欄に記入します。
⑶ 給与所得以外の所得がある場合には、その合計額を〈給与所得以外の所得の合計額〉欄に記入します。
(*例えば「公的年金等」は、「給与所得以外の所得の合計額」に含めて計算します。)
❷〈控除額の計算〉欄の記入について
❶で計算した「合計所得金額の見積額」を基に「判定」欄の該当箇所に✓を付け、その判定結果に対応する控除額(48万円/32万円/16万円)を「基礎控除の額」欄に記入して、完成です。
※「配偶者控除」又は「配偶者特別控除」の適用を受けようとする方は、〈控除額の計算〉の「判定」欄の判定結果に対応する記号(A)~(C)を「区分Ⅰ」欄に記入します。
Ⅱ. 給与所得者の配偶者控除等申告書の記入(*該当する方のみ記入)
①あなたの本年中の合計所得金額(見積額)が1,000万円以下であり、かつ ②配偶者の合計所得の見積額が133万円以下(給与所得だけの場合は、給与の収入金額が2,015,999円以下)である場合に、「配偶者控除」(もしくは「配偶者特別控除」)の適用を受けることができます。
(出典:国税庁「《記載例》令和2年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」より抜粋)
❶ 一定の要件の下、個人番号の記入を要しない場合があります。給与の支払者に確認してください。
❷ 「Ⅰ.給与所得者の基礎控除申告書の記入」の❶を参考に、配偶者の合計所得金額を計算、記入します。
❸ 「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算」(❷)で計算した合計額 及び 配偶者の生年月日を基に、「判定」欄の該当箇所に✓を付け、判定結果に対応する記号(①~④)を「区分Ⅱ」欄に記入します。
❹ 「控除額の計算」の表に、「区分Ⅰ」の判定結果(A~C)と「区分Ⅱ」の判定結果(①~④)を当てはめ、「配偶者控除額」又は「配偶者特別控除額」を求めます。
❺ 「区分Ⅱ」が①又は②の場合は「配偶者控除の額」欄に、③又は④の場合は「配偶者特別控除の額」欄に❹の表で求めた配偶者控除額又は配偶者特別控除額を記入して、完成です。
Ⅲ.所得金額調整控除申告書の対象者について(*該当する方のみ記入)
令和2年から新設された「所得金額調整控除」は、①その年の給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で、かつ②(イ)本人が特別障害者に該当する者(ロ)年齢23歳未満の扶養親族を有する者(ハ)特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する者のいずれかに該当する方が対象になります。
(該当する方以外は、記入する必要はありません。)
2020/11/10
今回は、令和2年10月1日にビールなどに課される酒税の税率が変わり、家飲みが増えている昨今、酒税の税率の変更は家計に直結するものであるといえます。今回はどのように変わったのか、今後の流れも含めてお話しします。なお、税率の改定は今後、令和5年10月と令和8年10月にも実施されます。
1.酒税法による分類
普段飲んでいるお酒ですが、酒税は酒類にかけられる税金であり、酒類の税法上の定義は「アルコール分が1%以上含まれる飲料」となっています。酒税法では酒類を次の4つに分類しています。缶には下記の名称が書いてありますので興味のある方は探してみてください。
①発泡性酒類…ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類
②醸造酒類…清酒、果実酒、その他の醸造酒
③蒸留酒類…連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ
④混成酒類…合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒
※昨年10月の消費税率引き上げの際に「みりんは酒税法上の酒類であるため軽減税率の対象とならず消費税率は10%に、アルコール分1%未満のみりん風調味料は酒類ではないので軽減税率の8%を適用する」となったのはみりんが④の混成酒類だからです。
2.今回の税率改正の対象となるもの
今回の改正で対象となるものは①発泡性酒類と②醸造酒類です。①の中のその他の発泡性酒類には新ジャンル(第3のビール)と呼ばれるビール系の飲料や、チューハイやサワーも含まれます。②の中の果実酒はいわゆるワインです。
3.税率の変化
今回の令和2年10月1日の改定及び令和5年10月、令和8年10月の改定による税率の推移(出典:財務省)
上記表から、ビールだと令和2年9月以前は350mlあたり77円の酒税だったものが令和2年10月から70円、令和5年10月から63.35円、令和8年10月から54.25円となり減税されていきます。一方、発泡酒は令和8年に税率が引き上げられ、新ジャンルも段階的に税率が引き上げられ令和8年10月からはビールと同じ税率となり、ビール系飲料は一律となります。つまりビールは減税され、発泡酒、新ジャンル(第3のビール)は増税されます。
清酒・果実酒は4合瓶(720ml)で考えると、清酒は令和2年9月以前の86.4円から令和2年10月で79.2円になり、令和5年には72円となります。果実酒は令和2年9月以前の57.6円から令和2年10月に64.8円になり、清酒と同じく令和5年には72円となります。
つまり清酒は減税され、果実酒は増税されます。
チューハイやサワーについては令和8年10月に350mlあたり28円から35円へ増税されます。
4.まとめ
今年の10月から3年ごとに酒税が改定されますが、酒類ごとに細かく分かれていた税率がかなりスリム化されることとなります。
ビール系飲料については最終的にすべて同じ税率になりますので低価格を売りにしていた発泡酒や第3のビールがどのようになっていくのか注目されます。