2021/07/12
今回は、成年年齢の引き下げによる税金への影響についてお話しさせていただきます。
1.成年年齢の引き下げ
平成30年(2018年)6月に成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が公布され、令和4年(2022年)4月1日から施行されることとなりました。なお、施行日時点で18歳以上20歳未満の方は、その日(2022年4月1日)に成年に達することとなります。具体的には、2002年4月2日生まれ~2004年4月1日生まれの方です。
2.未成年者控除(相続税)
相続人の中に未成年者がいる場合には、その未成年者に対し相続税が一定額控除される未成年者控除という制度がありますが、控除の額は未成年者が成人するまでの年数に10万円を乗じた額になります。現行では満20歳になるまでの年数ですが改正により満18歳になるまでの年数に10万円を乗じて金額を計算することとなります。そのため控除できる相続税額が2年分(20万円)少なくなります。
なお、既に未成年者控除の適用を受けたことがある場合に、未成年者のまま次の相続があるときに控除できる未成年者控除の額は前回の控除不足額の範囲内に限られますが、この特例として経過措置が設けられています。
3.相続時精算課税適用者の要件(贈与税)
相続時精算課税は、原則60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度ですが、この制度の適用を受けることができる者の年齢が、贈与の年の1月1日において20歳以上の者(現行)から18歳以上(改正)の者となり2年早く適用が受けられるようになります。
4.事業承継税制に係る受贈者の要件(贈与税)
次の事業承継税制の適用に係る受贈者の年齢要件が20歳以上から18歳以上に引き下げられます。
①法人版事業承継税制…後継者へ非上場株式等を贈与した場合に贈与税の猶予や免除を受ける制度
②個人版事業承継税制…後継者へ事業用資産を贈与した場合に贈与税の猶予や免除を受ける制度
5.その他の贈与税
次の特例制度の適用に係る受贈者の年齢要件が20歳以上から18歳以上に引き下げられます。
①贈与税の税率の特例…直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税は特例税率を適用するという制度
②直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置…結婚・子育て資金に充てるために直系尊属から信託受益権の付与等を受けた場合に1,000万円まで贈与税を非課税とする制度
6.個人住民税
未成年者のうち前年の合計所得金額が135万円以下の者は個人住民税が非課税となる措置が設けられています。この未成年者の年齢は民法にあわせているため、年齢が20歳未満から18歳未満へと引き下げられます。
7.税金以外
NISA制度やジュニアNISA制度の年齢要件の「20歳」が「18歳」に引き下げになります。
8.普段の生活で変わるもの変わらないもの
18歳(成人)になったらできること |
20歳にならないとできないこと (これまでと変わらないこと) |
携帯電話の契約、ローンを組む、クレジットカードをつくる、一人暮らしの部屋を借りるなどを親の同意がなくてもできる |
飲酒をする・喫煙をする |
10年有効のパスポートを取得する |
競馬、競輪、オートレース、競艇の投票券を買う |
公認会計士、司法書士、医師免許、薬剤師免許などの国家資格を取る |
養子を迎える |
男女ともに結婚できるようになる(女性の結婚可能年齢が16歳から18歳に引き上げられたため) |
大型・中型自動車運転免許の取得 |
2021/06/21
◆月次支援金について
経済産業省より、3度目の緊急事態宣言による支援策「月次支援金」の受付が6月16日より開始されると発表されました。今回は、月次支援金の概要についてご紹介いたします。
1.国の「緊急事態措置又はまん延防止等重点措置の影響緩和に係る月次支援金」(以下、「国の月次支援金」という)
<給付額> 中小企業等:上限20万円/月 個人事業主等:上限10万円/月
※1カ月ごとに支給の可否を判断
<申請受付期間>
・2021年5月分:2021年6月16日~8月15日
・2021年6月分:2021年7月 1日~8月15日
※福岡県の場合。対象月は地域によって異なります。
<給付要件>
①2021年4月以降の緊急事態措置又はまん延防止等重点措置に伴う飲食店の休業・時短営業又は外出自粛等の影響を受けていること
②対象措置が実施された月の売上が2019年(又は2020年)の同月比で50%以上減少していること
<給付対象>
①対象措置を実施する地域の個⼈顧客と直接的な取引があることで、2021年の⽉間売上が2019年(又は2020年)の同⽉⽐で50%以上減少した中小企業や個人事業主
②対象措置を実施する地域の飲食店と直接または間接的な取引があることで、2021年の⽉間売上が2019年(又は2020年)の同⽉⽐で50%以上減少した中小企業や個人事業主
上記、①・②を満たす事業者は、業種・所在地を問わず給付対象となり得ます。
2.福岡県「中小企業者等月次支援金」
<給付対象>
①県内に本社・本店のある中小法人・個人事業主等
②県内に本社・本店のある酒類販売事業者(中小事業者等)
<給付要件>
①飲食店の休業・営業時間短縮や外出自粛等の影響を受け、2021年5・6月の月間売上が2019年(又は2020年)の同月比で30%以上50%未満減少していること
②酒類の提供を停止する飲食店と取引があり、2021年5・6月の売上に係る「国の月次支援金」の給付を受けていること。
※福岡県感染拡大防止協力金の受給者は対象外です。
<給付額>
①法人:上限10万円/月 個人事業主:上限5万円/月
②法人:上限20万円/月 個人事業主:上限10万円/月(上乗せ支給)
※②については、上記算出方法から国の支援金額を差し引いた額
<申請受付開始予定> 2021年6月中旬
3.福岡市「売上が減少した事業者への支援」
<支援対象者>
緊急事態措置に伴い、飲食店の休業・営業時間短縮や外出自粛等の影響を受け売上が減少したが、「国の月次支援金」や「県の協力金」の支払対象とならない事業者のうち、以下のいづれかに該当する事業者
①「国の月次支援金」の給付対象であり、2021年5・6月の売上が2019年(又は2020年)の同月比で30%以上50%未満減少したこと
②「国の月次支援金」の給付対象でなく、2021年5・6月の売上が2019年(又は2020年)の同月比で 50%以上減少したこと
<給付額> 法人:上限20万円/月 個人事業主:上限10万円/月
<申請受付開始予定> ※国の制度確定後実施
・5月分:2021年6月中下旬
・6月分:2021年7月上旬
< 編集後記 >
今後公表される内容によって、詳細変更の可能性がありますのでご留意ください。
ご不明な点や当該支援金の申請についてご検討される方は、当事務所担当者までご相談ください。
2021/05/14
1.中小企業における所得拡大促進税制の見直し・延長
経済の好循環・持続的な成長には所得の増加を通じた内需拡大が重要であり、また、新型コロナウイルスの影響により雇用環境が悪化する中では、雇用を守り、個人消費の原資となる所得の下支えが必要です。このため、雇用を増やすことにより所得拡大を図る企業を評価できるよう、適用要件を一部見直し、簡素化したうえで適用期限を2年間延長することとなりました。
令和3年3月31日までに開始する各事業年度 |
令和3年4月1日以降開始する各事業年度 |
【要件】 ①継続雇用者給与等支給額:対前年度増加率 1.5%以上 ②雇用者給与等支給額:対前年度を上回ること
【税額控除】 ■雇用者給与等支給額の対前年度増加額の 15%の税額控除 ■継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率が2.5%以上であり、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には控除率を10%上乗せ(合計25%)
■税額控除額は法人税額の20%を限度 |
【要件】 ■雇用者給与等支給額:対前年度増加率 1.5%以上
【税額控除】 ■雇用者給与等支給額の対前年度増加額の15%の税額控除 ■雇用者給与等支給額の対前年度増加率が2.5%以上であり、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、控除率を 10%上乗せ(合計25%)
■税額控除額は法人税額の20%を限度 |
「継続雇用者給与等支給額の増加」から「雇用者給与等支給額の増加」へと判定要件が簡素化されます。
※教育訓練費増加額の要件:次のいずれかを満たすこと
①教育訓練費が対前年度比10%以上増加
②中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており経営力向上が確実になされていること
2.大企業における所得拡大促進税制の見直し等
適用要件のうち継続雇用者給与等支給額が前年度比3%以上増加という要件を、新規雇用者給与等支給額が前年度比2%以上増加という要件に変更したうえで適用期間が2年間延長され、令和3年4月1日以降開始する事業年度から適用されます。
3.税務関係書類における押印義務の見直し
国税に関する法令に基づき税務署長等に提出される申告書等(税務関係書類)については、これまで提出者等の押印をしなければならないこととされてきましたが、令和3年度税制改正により、令和3年4月1日以降、一部のものを除いて押印を要しないこととされました。
※地方公共団体の長に提出する地方税関係書類についても同様です。
|
税務関係書類の分類 |
押印の要否 |
原則 |
全般(例:確定申告書、給与所得者の扶養控除等申告書) |
不要 |
例外 |
担保提供関係書類及び物納手続関係書類のうち実印の押印及び印鑑証明書の添付を求めている書類(例:不動産抵当権設定登記承諾書) |
要 |
相続税及び贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類(例:遺産分割協議書) |
※代理の方が納税証明書の交付請求等をされる際に提出をしなければならない本人(委任者)からの委任状等についても、押印は必要ありません。
ただし、実印の押印及び印鑑登録証明書等の添付などにより委任の事実を確認している特定個人情報の開示請求や閲覧申請手続については、引き続き委任状への押印等が必要となります。
2021/04/16
◆中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)について
ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とした事業です。
<対象>
新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する、以下の要件をすべて満たす中小企業等。
<主要申請要件>
1.申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月
の合計売上高と比較して10%以上減少している。
2. 事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に
取り組む。※いづみ税理士事務所は認定経営革新等支援機関です
3.補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、
又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。
※交付決定後、「事業化状況・知的財産権等報告書」による報告義務あり。(5年間)
<予算枠、補助額、補助率>※下記以外に中堅企業枠(通常枠・グローバルV字回復枠)があります。
|
補助額 |
補助率 |
中小企業 通常枠 |
100万円~6,000万円 |
2/3 |
中小企業 卒業枠* |
6,000万円超~1億円 |
2/3 |
*卒業枠:400社限定。事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、
資本金又は従業員を増やし、中小企業者等から中堅・大企業等へ成長する事業者向けの特別枠。
※中小企業の範囲については、中小企業基本法と同様。
|
補助額(従業員数) |
補助率 |
緊急事態宣言特別枠 |
100万円~500万円(5人以下) |
中小企業3/4 中堅企業2/3 |
100万円~1,000万円(6~20人) |
||
100万円~1,500万円(21人以上) |
※主要申請要件1.~3.に加え、令和3年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急
の外出・移動の自粛等の影響を受けたことにより、令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が対
前年または前々年の同月比で30%以上減少していること。
<活用イメージ> ※経済産業省HPより
※「取得財産を処分制限期間内に処分する場合は事務局の事前承認が必要」等、いくつかの遵守すべき事項があります。
< 編集後記 >
今回ご紹介した事業は、「経済産業省HP▶新型コロナウイルス感染症関連▶事業再構築補助金」にてご確認いただけます。
当該補助金の申請についてご検討される方は、当事務所担当者までご相談ください。
2021/03/10
❖ 緊急事態宣言の発令を受けた福岡市の支援策について
本年2月28日に緊急事態宣言が解除されたことに伴い、福岡県の緊急事態措置も2月28日迄に短縮されましたが、今回の緊急事態宣言の発令を受け、福岡市は売上が減少した事業者などに独自に給付金を支給するなど、新たな支援策を実施することを発表しています。
今月号の事務所通信では、これらの支援策からいくつかご紹介します。
(※事業によっては補正予算の成立を前提としており、内容等が変更になる場合があります。)
Ⅰ. 売上が減少した事業者への支援
緊急事態宣言に伴い、飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受け売上が減少した事業者のうち、国や県の一時金等の対象とならない事業者に対し、法人は15万円、個人事業者は10万円を上限に支援します。
● 対象事業者
国の「緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金」(以下「国の一時金」という。)や「福岡県感染拡大防止協力金」(以下「県の協力金」という。)の支払対象とならない事業者のうち、以下のいずれかに該当する事業者
⑴ 国の一時金の対象(※注)であり、2021年の1月から3月のいずれかの月の売上が2019年又は2020年の同月に
比べ30%以上50%未満減少したこと
⑵ 国の一時金の対象(※注)でなく、2021年の1月から3月のいずれかの月の売上が2019年又は2020年の同月に
比べ50%以上減少したこと
※注)国の一時金の対象とは、緊急事態宣言の再発令に伴い、緊急事態宣言の発令地域(以下「宣言地域」という。)の飲食店と直接・間接の取引がある、又は、宣言地域における不要不急の外出・移動の自粛による直接的な影響を受けた事業者のことをいいます。
● 支援内容
法人:上限15万円
個人事業者:上限10万円
※法人又は個人事業者につき、受給は1回とします。
● スケジュール
申請受付開始:令和3年3月10日(水)※オンライン申請は、3月中旬から下旬に受付開始予定です。
支給開始(予定):令和3年3月中旬以降
申請締切(予定):令和3年6月14日(月)
Ⅱ. 感染症対応シティ促進事業(中小企業等の感染症対策強化)
市民に商品販売やサービス提供を行う来店型の施設等を対象に、感染症対策強化の取り組みにかかる物品・サービス導入経費や工事経費の3分の2、上限60万円(うち、物品・サービス導入経費は上限20万)を支援します。
● 対象事業者
以下の要件を満たす事業者が対象となります。
⑴ 来店型の施設・店舗等を福岡市内に有する中小企業・小規模事業者等。
⑵ 申請日時点で福岡市内に店舗施設等を運営・営業している者。
⑶ 市税に係る徴収金に滞納がない者。又は市税の徴収猶予の特例制度等の対象となる者。
⑷ 新型コロナウイルス感染症にかかる各種業界別ガイドラインを遵守し、感染症対策を行っている者。など
● 支援内容
新型コロナウイルス感染症にかかる各種業界別ガイドライン等に示す感染症対策強化に資する工事や物品・サービス導入に必要な経費の3分の2、上限60万円(うち、物品・サービス導入経費は上限20万円)を支援します。
① 工事経費
・客席用間仕切板の設置、自動水栓の設置、換気機能を搭載したエアコンの設置
・非接触型センサー付きトイレへの改修、三密を避けることを目的としたレイアウト変更、テイクアウト専用カウンターへの改修など
(※市内の施工業者による施工に限ります。)
② 物品・サービス導入経費
・空気清浄機(HEPAフィルタによるもの)、換気に資するサーキュレーター、サーモカメラ
・実際の来店時において感染症対策強化に資するデジタル対応ツール(キャッシュレス決済サービス等)など
(※マスクや消毒液等の消耗品は対象外となります。)
● 申請手続き
1事業者につき、申請は原則1回まで
● 申請期間
令和3年3月10日(水)から令和3年6月30日(水)まで
※工事経費は、交付決定後に着手するものが対象となります。
※物品・サービス導入経費については、令和3年2月25日(木)以降に購入したものが対象になります。
❖❖❖ 消費税の総額表示について ❖❖❖
★令和3年4月1日より、 税込価格の表示(総額表示) が必要になります!
・事業者が消費者に対して行う価格表示が対象です。
・店頭の値札・棚札などのほか、チラシ、カタログ、広告など、どのような表示媒体でも、対象となります。
◇ 総額表示に《該当する》価格表示の例 |
◇ 総額表示に《該当しない》価格表示の例 |
・10,780円 ・10,780円(税込) ・10,780円(うち税980円) ・10,780円(税抜価格9,800円) ・10,780円(税抜価格9,800円、税980円) ・9,800円(税込価格10,780円)
*税込価格が明瞭に表示されていれば、消費税額や税抜価格を併せて表示することも可能です。 |
・9,800円(税抜) ・9,800円(本体価格) ・9,800円+税
*平成25年10月に施工された消費税転嫁対策特別措置法により、令和3年3月31日までは上記のような価格表示も認められていますが、令和3年4月1日以後は、総額表示が必要になります。 |
◆編集後記◆
今回ご紹介した支援策を含め、令和3年1月の緊急事態宣言の発令を受けた福岡市独自の支援策については、
福岡市のHP(https://www.city.fukuoka.lg.jp/shicho/koho/kinkyu202101.html)でもご確認頂けます。
当該支援策の適用を検討される方は、当事務所担当者までご相談ください。