2016/09/12
税務通信9月号
「ふるさと納税」と災害義援金、及び「企業版ふるさと納税」
ワンストップ特例制度の適用が始まった4月以降、「ふるさと納税」の利用者が大幅に増えてい
ます。熊本地震の際に活用された方も多いようですが、災害義援金との関係には注意が必要で
す。今回は、災害義援金に係る「ふるさと納税」の取扱いについて簡単に述べさせて頂きます。
また、8月に「企業版ふるさと納税」の対象となる事業が決定しました。そこで、「企業版ふるさと
納税」の概要にも触れていきたいと思います。
1.「ふるさと納税」と災害義援金
Ⅰ.災害義援金が「ふるさと納税」として扱われるケース
平成28年熊本地震を受け、個人や法人の方が日本赤十字社等へ支出した一定の義援
金についても、東日本大震災時と同様に、「ふるさと納税」として取扱われます。具体的には
義援金の支出先が以下に掲げるいずれかに該当する場合に、個人住民税では「ふるさと納
税」として取扱います。ただし、②の場合のように、募金団体を通じた義援金については、ふ
るさと納税ワンストップ特例制度を適用することができません。そのため、上記制度の申請を
行っていない方はもちろん、申請を行っている方でも必ず確定申告をしなければなりません
ので注意が必要です。
①国又は地方公共団体
②寄附した義援金が募金団体を通じて、最終的に国又は地方公共団体に拠出されること
が明らかである当該募金団体(例:日本赤十字社、中央共同募金会が行う災害義援金
募集)
Ⅱ.必要書類
税制上の寄附金控除の適用を受けるためには、確定申告書に次のいずれかの書類を添
付しなければなりません。
①熊本県等の災害対策本部が発行する受領証、募金団体の預り証
②義援金受付専用口座である場合の半券(振込票控)、及び、義援金受付口座であること
がわかる資料(募集要綱、募金趣意書、新聞報道、募金団体のホームページの写しな
ど)
2.企業版ふるさと納税
Ⅰ.制度の概要
法人が国の認定を受けた地方公共団体の地方創生事業に対して寄附を行った際に,既
存の損金算入措置(寄附の全額が損金算入されることにより,寄附額の実効税率相当分の
税負担が軽減)に加えて,新たに寄附額の3割相当分が税額控除される税制上の優遇措置
です。その結果,法人が企業版ふるさと納税として寄附を行った場合には,最大で寄附額の
約6割相当分の税負担が軽減されることとなります。
企業版ふるさと納税の特色として,既存の損金算入措置においては団体の属性(寄附先
が地方公共団体であること。事業の特定はない。)が要件とされていたことに対し,本税制
は,対象を事業単位で特定(国が認定した地方創生事業)している点にあります。
Ⅱ.対象事業
内閣府地方創生推進事務局が8月2日に、「企業版ふるさと納税」の対象となる「まち・ひ
と・しごと創生寄附活用事業」を決定したと発表しました。第1回となる今回は,6県と81市町
村が申請していた合計102事業が認定されており、福岡県も2事業について認定を受けて
います。事業の詳細については,同事務局のウェブサイトをご参照下さい。なお,今後も,
11月と来年3月に新たな事業の認定が行われる予定です。
Ⅲ.税目ごとの措置
寄附額の3割相当分の税額控除のうち,2割分は法人住民税(地方税)と法人税(国税)か
ら控除されます。ただし,過度に税収に影響を与えることを避ける等の観点から,法人住民
税にあっては法人住民税法人税割額の20%,法人税にあっては寄附額の1割もしくは法人
税額の5%を控除の上限としています。
寄附額の3割相当分の税額控除のうち,1割分は法人事業税(地方税)から控除されま
す。法人事業税についても,法人事業税額の20%を控除の上限としています。ただし,地
方法人特別税の廃止後は法人事業税額の15%が上限となります。