2023/09/11
事務所通信9月号
長年にわたって勤務する従業員へのねぎらいと感謝の気持ちを込めて永年勤続表彰金が贈られることがあります。福利厚生として導入しているところが多いですが、給与として所得税の対象となるのか、報酬として社会保険において取り扱われるのか迷うところだと思います。今回は永年勤続表彰金の税務上、社会保険上、労働保険上の取扱いについてお話しします。
1.所得税の取り扱い
創業記念で支給する記念品や永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品などは、次に掲げる要件をすべて満たしていれば、給与として課税しなくてもよいこととなっています。
なお、記念品の支給や旅行への招待費用の負担の代わりに現金、商品券などを支給する場合にはその全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。
また、本人が自由に記念品を選択できる場合にも、その記念品の価額が給与として課税されます。
(1)創業記念などの記念品
①支給する記念品が社会一般的にみて記念品としてふさわしいものであること。
②記念品の処分見込価額による評価額が10,000円(消費税および地方消費税の額を除きます)以下であること。
③創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給をするものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること。
(2)永年勤続者に支給する記念品や旅行や観劇への招待費用
①その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。
②勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること。
③同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔が
空いていること。
2.社会保険の取り扱い
社会保険(健康保険・厚生年金保険)において永年勤続表彰金が報酬や賞与に含まれるかどうかは2023年6月27日に一部改正された「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」によると以下の要件を満たす場合、原則として「報酬等」に該当せず、社会保険の対象外とされることが示されています。
■永年勤続表彰金における判断要件
①表彰の目的
企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。
②表彰の基準
勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。
③支給の形態
社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上空いているもの。
※永年勤続表彰金については、企業により様々な形態で支給されるため、上記の要件を全て満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として「報酬等」に該当しないこととなっています。
ただし、上記要件を一つでも満たさないことをもって直ちに「報酬等」と判断するのではなく当該永年勤続表彰金の性質について十分確認したうえで総合的に判断することとなっていますので企業ごとでの判断が必要となります。
3.労働保険の取り扱い
労働保険(労災保険・雇用保険)においては、「年功慰労金」「勤続褒賞金」は、就業規則・労働協約等の定めの有無に関わらずに、一般的に賃金に含まれないとされています。永年勤続表彰金は勤続褒賞金と同じであると言えるので賃金に含まれません。
賃金に含まれないので労働保険料の対象とする必要はありません。