2021/09/01
事務所通信8月号
❖電子帳簿保存法 令和3年度税制改正について
令和3年度の税制改正において、経済社会のデジタル化を踏まえ、「経理の電子化による生産性の向上」「テレワークの推進」「クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上」のため、帳簿書類を電子保存する際の手続を抜本的に簡素化する観点から「電子帳簿保存法」の改正等が行われました。(令和4年1月1日施行)
今回は、電子帳簿保存法の改正内容についてご紹介いたします。
1.「電子帳簿保存法」とは
「電子帳簿保存法」とは、各税法で原則「紙での保存」が義務づけられている帳簿書類について一定の要件を満たした上で「電子データによる保存」を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律です。
電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は、大きく以下の3種類に区分されています。
区分 |
概要 |
①電子帳簿等保存 |
会計ソフトなどで電子的に作成した帳簿や電子的に作成した書類をデータのまま保存 |
②スキャナ保存 |
受領又は作成した紙の書類を画像データ化して保存 |
③電子取引 |
授受した取引情報のデータをデータで保存 |
2.令和3年度税制改正
令和3年度税制改正より見直された電子帳簿保存に関する改正は、次の通りです。
区分 |
項目 |
概要 |
① 電子帳簿等保存 |
承認制度の廃止 |
これまで必要であった税務署長への事前承認が不要に |
最低限の要件を満たせば電子保存が可能 |
複式簿記による記録であれば、最低限の要件を満たすことで、電子保存をすることが可能に |
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優良な電子帳簿の ペナルティ軽減措置 |
「優良な電子帳簿」の保存要件を満たし、かつ、あらかじめ本措置適用の届出書を提出しているときは、 ・ 過少申告加算税5%軽減 ・ 65万円の青色申告特別控除の適用が可能 |
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② スキャナ保存 |
承認制度の廃止 |
これまで必要であった税務署長への事前承認が不要に |
要件の緩和 |
・ タイムスタンプ※の付与期間が最長約2か月以内に ・ 受領者等の自署が不要に ・ 検索要件の緩和 ・ 一定のクラウド等を利用することでタイムスタンプが不要に (※)タイムスタンプ…書類作成日付を確認するための時刻証明サービス |
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要件の廃止 |
相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等の適正事務処理要件が廃止(スキャン後即原本廃棄が可能に) |
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不正によるペナルティ加重措置 |
電子保存に関して不正があったときは重加算税10%加重 |
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③ 電子取引 |
要件の緩和 |
・ タイムスタンプの付与期間が最長約2か月以内に ・ 検索要件の緩和※ (※)基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合で一定の要件に該当するときは検索要件すべて不要 |
書面印刷による代替保存の廃止 |
所得税や法人税において電子取引の取引情報を紙に印刷して保存する代替制度が廃止(消費税は引き続き可能) |
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不正によるペナルティ加重措置 |
電子保存に関して不正があったときは重加算税10%加重 |
改正により、導入の足枷となっていた要件が緩和・廃止され取り入れやすくなった一方、不正によるペナルティが重くなりました。
また、実務において影響が大きいと考えられるのは、「電子取引情報の紙印刷代替保存の廃止」ではないでしょうか。たとえば、電子メールで請求書データを受け取り、それを紙に印刷して保存されている事業者にあっては、来年1月から所得税や法人税において認められなくなりますのでご注意ください。