2019/11/15
事務所通信11月号
災害に関する税務上の取り扱い
近年、日本各地において災害が頻繁に起きており、最近では九州北部豪雨や台風15号、台風19号と立て続けに起きている状況です。そこで今回は災害に関して法人や個人が支出する費用のうち、支援に関するものに対する税務上の取り扱い等についてお話しさせていただきます。
1.従業員に対する災害見舞金等
法人が、災害により被害を受けた従業員又はその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金品は、福利厚生費として損金の額に算入されます。また、法人が、自己の従業員等と同等の事情にある専属下請先の従業員等又はその親族等に対して一定の基準に従って支給するものについても、同様に損金の額に算入されます。
既に退職した従業員又は採用内定者に対して従業員と同一の基準で支給した災害見舞金品についても、被災した自己の従業員等と同一の基準に従って支給するものは、福利厚生費として損金の額に算入されます。
なお、事業を営む個人においても同様に取り扱われます。
※一定の基準とは、①被災した全従業員に対して被災した程度に応じて支給されるものであるなど、各被災者に対する支給が合理的な基準によっていること、②その金額もその支給を受ける者の社会的地位等に照らし被災に対する見舞金として社会通念上相当であることが必要です。
2.取引先に対する災害見舞金等
法人が、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程においてその取引先に対して行った災害見舞金の支出、事業用資産の供与等のために要した費用は、交際費等に該当しないものとして損金の額に算入されます。
3.取引先に対する売掛金等の免除等
法人が、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金、貸付金等の債権を免除する場合には、その免除することによる損失は寄附金又は交際費以外の費用として損金の額に算入されます。また、既契約のリース料、貸付利息、割賦代金の減免を行う場合及び災害発生後の取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様に取り扱われます。
4.取引先に対する低利又は無利息による融資
法人が、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として低利又は無利息による融資を行った場合における通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は、寄附金に該当しないものとされます。
5.自社製品等の被災者に対する提供
法人が、不特定又は、多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、寄附金又は交際費等に該当しないもの(広告宣伝費に準ずるもの)として損金の額に算入されます。
6.災害対策本部等に対して義援金を支払った場合
法人が、被災地の県下の災害対策本部に対して支払った義援金は、「国等に対する寄付金」に該当し、その全額が損金の額に算入されます。
個人の場合は、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
なお、当該義援金は地方公共団体に対する寄附金としてふるさと納税に該当するため、個人住民税の寄附金税額控除の対象になります。
※ふるさと納税のポータルサイトからも災害支援寄付を行うことができます。サイトによっては寄附できる自治体が限られている場合もありますが、手続き方法は通常のふるさと納税の場合と同じです。